平成
平成が終わるらしい。
やっと平成30年は西暦2018年、と換算できるようになったというのに。
昭和でさえ最近過ぎて判らないというのに。
平成が終わる。
まさか、自分が三元号を生きるとは思わなかった。
明治大正昭和を生きたヒトは、それだけで偉人だと思った。
戦争を生き抜いたすごいヒトだと思った。
今後の三元号は、大量生産だろうから、ありがたくはないだろう。
生き死にを、遠くから眺めていて、無関係だと思っていたら、あぁ自分も歳取ったわ、とか、そんなもの。
定期健診なんて面倒臭ぇなぁ、と思っていた、その頃が昭和とか平成一桁。
平成に慣れてきた頃から、毎年毎年どこかが引っ掛かる。
何の数値かわからないまま、BMIなるもののために食生活を改善し、
下がったと思ったら、中性脂肪って何だ?ガンマGDP?
敵の名前の読み方も判らないまま、言われるままに指導され、言われるままに二次検診。
病院なんて他人事だと思っていたら、いつの間にやら、ビッグイベントは病院に行くことぐらいしかない。
検査、処方、経過観察、再検査、入院、定期健診。
人間だと思っていたが、この歳になると、そうかモノなのか、と感じる。
定期整備、それ自体が難関だと思い知る。
車検に出した途端に、ボロクソにボロが見つかり、買う方が安いので廃車まっしぐら。
自分の体の替えはない。わが身可愛い。
廃車は嫌です、もう少しだませるように、何とかなりませんか。皆そう考える。
そりゃ病院は儲かるわけだ。
病院は年寄りしかいない、とネタにしていた。
ネタではなく、年寄りしか行かないのだ。
若者は、身体機能で治癒する。
新陳代謝とか言う、あの若いうちしか使えない特殊能力だ。
しっかり食べて、しっかり眠ると、翌朝にはHPが満タンになっている、あの機能。
年寄りは、気合を入れても、応える能力がない。細胞に若さとやる気がない。
病院で、補助という名のメインの薬を飲み、じっくり治すしかなくなる。
ボクぐらいになると、もういけない。
若いうちの魔法が何一つ使えなくなる。
縁起をかついでカツを食べても、まず油物を消化しない。
腹痛なら可愛いもの。食べたその晩には、一足飛びに下痢になる。
少しばかりに荷物に、エイと気合を入れれば、腰や膝がギクッとなる。
判りにくいところが痛くなるので、肉体労働は本当に慎重になる。
筋肉痛には潜伏期間ができる。
3日後とかに、意識したことがないところが痛くなる。
脇と脇腹の間とか、肩甲骨のちょっと下とか、湿布も貼れない位置。
忘れた頃に効いてくる、ある種の呪いである。
油物を避けて、蕎麦を食べても、きざみ海苔でむせて、喉に張り付いて、死にそうになる。
同じくむせる理由で、ティラミスを敬遠するようになり、小ぶりな大福とか和ものに移行する。
疲れたからと、早めに休むと、その日のうちにトイレに起きる。
その次に四時に目覚めて、そのまま眠れない。
仕方ないから、新聞でも読もうとするが、まだ朝刊すら来ていない。
・・・
そんなことを、ボクより先の昭和の先輩から聞かされ、腹の底から笑ったものだ。
平成生まれの皆様。
笑うことなかれ。
ボクと同じように。
あなたもそうなる。
一世代前は、昔のヒトとなるのだ。
常に年老いていくのだ。
一年を考える前に、振り返る前に、今日を楽しもう。