MelancholyDampirの日記

ウツな人の独り言

父と孫と

実家に用があり電話した。
父が出た。
ということは母は不在なのだ。
 
息子が電話をじーっと見つめているので渡してみた。
スピーカーをオンにして、周りにも聞こえるようにして様子を見る。
息子はまだ話せない。
こちらからは鼻息、向こうからは『もしもーし』が続く。
やっと「孫」だと気付き懸命に話しかけている。
 
『どうしたの?じいちゃんだよぉ?』
 
まだ「じいちゃん」というのに照れがある感じだ。
 
「じ・・じじぃって・・言った」
 
息子はオウム返しの時期で「・・と言った」がお気に入りである。
 
『間違ってかけちゃったの?自分でかけてみたの?』
 
「じ・・じじぃって・・言った」
 
『姉ちゃんは?○○は?どうしたの?どうしたの?』
 
何だか父に要らぬ心配をかけているようだ。
(家族に何かあったと思った・・か?)
 
「じ・・じじぃって・・言った」
 
と息子が言った。
 
『何?どうしたの?』
 
『どうしたの?どした?父は?どぉした?』
 
『どうしたん!!??』
 
徐々に大声で方言丸出しになった。
息子は目を丸くして「めんねー(ごめんね)」と呟いて走り去った。
 
さすがに間が悪いとも思えなくなったので電話に代わって出た。
父はホッとした様子。
今日はリサイクルで「車のホコリ落としにに使うハタキを買った」と報告してくれた。
実家に車はない。
更に「(実家の)庭の柿が甘くて評判が良い」と言った。
もらって、不味かったと言うヒトもおるまい。
父は続けた。
 
『最後に熟したのを一個は残すん。』
『全部取らないで、トリにもやるん。』
『ソレが・・自然の摂理ってもんだから』
 
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ほおーっと呟いて感心した。
野良犬を半殺しにしたりネズミを潰したり、というのが父の幼い日の武勇伝は忘れたフリをした。
野山のキイチゴを根こそぎ食べた父の記憶も忘れたフリをした。
川で魚を釣って一匹も戻さなかった父の記憶も忘れたフリをした。
 
電話が終って、外で一服した。
しかし・・あんなに「じーさん」な声だったかなぁ・・と思った。
息子がボクの後を追って出てきてしまった。
もう外は冷える。
 
『何?どうしたの?』
 
ボクの声は若い日の父と全く同じだった。