クリスマスの思い出を語って。
ウツになって数年して「全生活史健忘」とやらになった。
誕生日はおろか全ての自分の記憶がなくなった。
家族・友人、全ての顔と名前を忘れた。
忘れきれないものもあった。
脳が忘れても血肉が憶えていたからである。
中学3年の夏にそのヒトに会った。
高校1年の冬にそのヒトは死んだ。
クリスマス。
ボクはそのヒトの似顔絵を描いて、待ち合わせ場所に立っていた。
そのヒトは来なかった。
全てを知ったときクリスマスは過ぎていた。
街は浮かれきっていた。
似顔絵は出会った川に流した。
ボクは暴れていた。
正式な葬送もできず、そのヒトには会えなくなった。
そのヒトはクリスチャンだった。
この夜は、どんな些細な争いもやめて欲しい。
生きているなら争わないで欲しい。
メリークリスマス。