デブ
デブが嫌いだ。
自分に甘く、他人に厳しいからだ。
小太りも嫌いだ。
デブを引き合いに出して、自らを正当化するからだ。
腹が減る前に買い出しに出かける。
カゴいっぱいに買っているデブ。
ジュース、ビール、焼酎、ポテチ、チョコ、アイス・・。
主食らしきが見当たらない。
そうか、あれが主食か。
全部一人で食うのか。
デブがこっちを見る。
太いシルエットのジャージを着込み襟をを立てている。
哀川翔さんみたいな眼鏡をかけている。
となりでチョコを追加しているのは、彼女か奥さんか・・。
小太りだ。
『ナニ見てんだ!?』
やっぱり哀川さんみたいな声だった。
ボクは堪らず笑った。
『ナニ笑ってんだぁ!?』
デブが、怒っている。
温厚なイメージのデブが、コアラのマーチを詰めながら怒っている。
もうダメだ。
堪えろボク。
・・・
小太りが唐揚げを詰めている。
「半額」って貼ってある。
何個も買っている。
限界だ。
「そんなに食ってんじゃねーよデブ!!」
『悪いのかぁ!!??』
「悪いわ! 見てるだけで腹いっぱいになった!」
笑いを堪えていたので、ついつい大声になった。
空気が静まった。
ボクは小心者だからすぐに帰った。
未だに腹が減らない。
げっぷが出る。
デブ本人は、誰をデブだと思うんだろうか。
あのジャージはサイズ表記はあるんだろうか。
見せてもらえば良かった。