義父のひとこと
雪が深くなった。
もう根雪だろうと思う。
久しく実家の墓参りに行っていないなぁ・・・
ふと思った。
きっと父母双方の先祖代々の墓は、小汚いのだろう。
義父は、墓を敬う。
頗る無礼な振る舞いも目立つが、先祖には畏敬を込める。
墓はとにかく綺麗にする。
無論、参った時だけだが。
ボクは、墓参するなり、墓に手柄杓で水をかける。
それがボクの中での、伝統で作法でしきたりであっただけ。
義父は怒鳴る。
『お前!いきなり頭から水かけられたら、どんなだ!?』
だって、作法だから・・と、独りごちながら線香に火を点けていると、また怒声が飛ぶ。
『墓も綺麗にしないで、作法もへったくれもあるか!?』
『まずご先祖さんに手を合わせろや!』
墓を磨き上げている義父を手伝う。
義父もつぶやいている。
『鳥のクソやらカラスの羽やら、そんなもん頭にくっついてたら、ご先祖さんも気分悪いべや』
『冬んなったら(雪が積もったら)、解けるまで来れんしよ』
『・・・ん・・綺麗になったら、もう水なんか、かけんくても良いんだ』
心なしか笑顔だ。
お墓には大抵笑顔で参る。
義父が怒鳴って、周りが茶化すからだ。
義父は言う。
『クソ喰ったみたいな顔で来たって、誰も喜ばんべ』
実家の墓参りが心配になってきた。