MelancholyDampirの日記

ウツな人の独り言

父親の誕生日

昨日、母親とに電話をした。
確か父親の誕生日である。
母に電話をしたことで「憶えているぞ」とアピールをして終わりにしようと思った。

父は寝ていた。
昔から21時に寝て、4時に起きるのである。
ラッシュに無縁の時間に出勤し、会社でコーヒーを飲んで、新聞開いて、それから仕事をするらしい。
「当番」より早く出社するので、暖房を入れたり、掃除したりで重宝されているらしい。
良く知らないが、結構偉いヒトらしく、定年を過ぎても働けている。
仕事のグチは聞いたことがなく、そもそも父に感情が少ない。

ソレが息子達には「厳格な父親」と映り、なんとなく威光を放っているのである。
ボクが紙飛行機の夢中になっているときに、父はラジコン飛行機にはまっていた。
ボクがソノシート(判る?)で音楽を聴いていたとき、父はオーディオに夢中で自作していた。
ボクが原チャを盗もうとか、髪にソリをいれようかとしていたとき、
父は中型のバイクを乗り回し、髪型はアフロであった。
ボクは長くファッションに興味があるが、
父はある時期からウェスタン調にはまり、今に至るまでオールレザーの男となった。


なんだ、このオヤジ・・



つまり、こういう趣味がつかめず、どの分野にもひとことありそうなヒト。
彼へのプレゼントはいっつも悩むし、だから何もあげなくていーやとなるのである。
ボクも父であるし、そのうち子供たちからプレゼントがもらえるかなと思ってはいる。
でも、子供らが大きくなったら、やっぱり期待はしてももらえないと思う。

ボクの父は違う。

誕生日が近づくと「欲しいもの」を探してきてわざわざ教えてくれる。


ヨーカ堂の良いカバンが2万円なんだ』


当時兄弟三人は金がなく、もっともボクは今もないし、下の弟はいつも火ダルマである。
とにかく小遣い銭の範囲で「何か喜びそうなものを選ぶ」のが楽しいのである。
ボクは当時、代表して言った。
「そんな高いものは買えない、いつものようにネクタイやセーターでさ・・」



『1万は俺が出す!お前達は残りをうまく分けて出せ?』




「プレゼントってそういうもんか?」



父はセーターとかカーディガンが大好きで山のように持っている。
同じようなのを何着も持っていて、どれも手放さない。
しかることこにまとめて寄付すれば、セーターだらけの民族でひとつの町ぐらいはできると思う。
そして、子供たちにもらったセーターは何か気に入らないのであるから厄介である。

今年はクリーム色のカシミアのカーディガンが欲しかったらしい。
さすがに子供たちに要求はしなかったが、母は足が棒になるほど探したらしい。
冬に6枚も着ているやつが何をカシミヤ・・。

イメージ 1


そういえばベージュや茶とか落ち着いた色は良く見るかなぁ。
カラフルなのはあっても「クリーム」ってないかもなぁ。


高島屋で6万もするのしかなくって、どうしようかと思った』


落胆する母の声・・まさかそんな、中古車が買えるような服を買ったのか?
このデフレ時期に、よりによって「何も揃っていない百貨店」で何を血迷う?



『でもリサイクルに2800円であってさぁ・・』


あったのね・・安いね・・よかたね。

何か言いたい父も『こりゃいい』と即決であったらしい。

そんなこんなで父の携帯に電話した。
いつも『オレのは鳴らないからもっても無駄』といっていたが、
誕生日は「余計な淡い期待」を持って、持っているであろう。
果たして、酔った父がでた。


『オレわぁぁ・・しゃんしゃい!になりましたよぉぉぉ』



電話でよかった。
面と向かって言われたら、怒りを通り越して泡をブクブクとなるところだ。

下の弟が働いている居酒屋に、開店から夫婦で上がりこみ飲んでいるらしい。
弟が電話に出た。

「働いてるのに電話して大丈夫か?」

『いや、ダメだ・・』

子供達が家を出て、父はすっかり老け込んだと思った。
そういう寂しさがこういうときに嬉しさとして吹き出すのであろう。
感情の少ない父にしては上出来といったところか。

弟をオーイオーイと呼ぶだらしのない父の声を聞きながら、
ボクは大人になったと少し思った。

が、両親からすればボクらは、偉くなろうがいつまでも「ただの子供」であるのだ。
ボクがジジィになっても、やはり、いい大人になった子供らを子供扱いするのであろう。