MelancholyDampirの日記

ウツな人の独り言

ずっと先で待っていて下さい

ボクには父がいる。
昨日死んだ。

正確には「ボクが幼少期の父」である。
多忙な実両親に代わり、
母(コレも2人いる)と兄たちと、ボクの幼年期を幸せで染め上げてくれた。

ボクに耐えられない。
ひとりの父の死という、全くの事実であるのに、言葉が追いつかない

ヒトが生まれ、生きていて、生きてきて、歳をとる。
人生の完成を見てか、見てないからか、この世から消える。
ソレを死とか浄化とか往生とか言う。

みんなが落ち込み、泣き、沈み、存在が無くなったコトを拒否しながら魂にしがみつく。
いや・・さ・・きっと乗り越えて、いつか笑い話になるんだ・・・てそんな話を良く聞く。

ボクは当分、笑い話にできないと思う。


父さん、ごめんなさい、まだ元気になってなくて



父さんは博学で「飲む・うつ・買う」が見事な調和を見せた人物である。
背中をしっかりと見せたが、頭頂も相当に見えていた。


父さん、今日いや昨日はね、うん今もね吹雪いてるよ。

『オレは人材探して留萌まで行って猛吹雪で、もうどうにもなくなっちまって・・・』

何十回も聞いたよ・・その話。
ってもう何十回でも聞きたかったよ。


イメージ 1



父さん、母さんがね今、来ているんだ。
そう、北海道にさ。 
ボクがひどく具合が悪かったから・・電話が来たと思ったらもう来ていたんだ。
そういう実母の根っこの性格を、父さんは何も教えてくれないで、

『可愛かったんだよぉ・・お前のお母さんはぁ』


なんて赤い顔して、大相撲を見ながら、食べもしない寿司を前にして笑っていたね。
父さん、唐揚げはね、北海道ではザンギって言うんだよ。
父さん、唐揚げは絶対に一箇所しか認めなかったね。
衣から揚げ方から、絶対に誰にもウンスン言わせなかったね・・。



唐揚げのウンチク、聞かせろよ!!




今日はね、そうだね・・もうずっとこればっかり、横綱がね引退するんだってさ。

父さんなら、ずっとずっと、深いコメントをしたか、
『オレは好かない』と片付けたかな・・・。



イメージ 2



父さんが昔と言ったって、そんなに「昔」じゃないよ。
頑張ってるよ、日産。
トヨタが凄いのは日産の下地があったからだよね。
何も聞かせてくれなかったね。
父さんが全国から人材を集めたって・・凄いと思うよ。

父さん、ボクは変わったけど、何も変わりたくなかったよ。
きれいな畑に、無理やりマンションが出来たくらいで「昔」と何も変わらない・・よ。

ボクが小学生になってさ、父さんの家に向かうバスを待っているんだ。
歩道橋の上に、真夏なのにウロウロ弟と遠くを見てたんだ。
もう何本もバスが来るのに、みんな青色でさ・・。
そう、黄色とオレンジのあのバスが来なくてね。
弟が泣き出した頃、来た!って走って乗って。
長い林の道を抜けて、市民の森を抜けて、うんうんカーブでね、橋があってね。

もうあそこが「住宅地」になってしまっている事実はあるんだ。
ボクの目には入らないだけでね。
「住宅前」なんてウソみたいなバス停でさ、弟に半分泣かれながら、歩いて。

いつの間にか、走り出して、きちんとした道も通らないで、民家を横切って。
金鳥蚊取り線香の匂いをかいで「あ、誰かいるぞ!やった!」って。

「あ、○兄ちゃんだ、父さんは仕事かなぁ!?」

玄関からなんてあんまり入らなかったね。
イカを食べた、花火をしたあの縁側・・今も、これからも大好きだよ。

あの急な坂を上って、今日、また縁側に行ったら会えるかな?



父さん、ボクだよ



今後も「誰もいない縁側」にはならないと思うよ。
あそこはみんながくるホントの玄関で、入ってくる風がきれいだったからね。

何年かして、また何年かしても、あの縁側からは・・仏壇で父さんが笑ってるんだね。

ずっと先で待っていて下さい。