MelancholyDampirの日記

ウツな人の独り言

どうか妻が眠れますように

こんな夜中はみな眠っている
ボクは時々起き出して、外に出てタバコを吸う
 
冬の夜空は冷たい
そしてとても星がきれいだ
今晩は月が真っ白で、その周りを星が丸く囲んでいるのだ
珍しいこともあると眺めていたら流れ星、か
ボクの願い事なんかないのだ
でも呟いていた
 
「どうか妻が眠れますように」
 
ウツになってからこっち、妻は熟睡なんかしたことがない
6年半前、ボクが黒い顔をして息もできず死を待っていたときから
ソレを見て、私が何とかする!と決めたときから
妻は熟睡なんかしていない
熟睡するということさえ忘れてしまったのだ
ボクの姿を見なくなると、探して探して大丈夫?と言う
ボクが夜中に起きると、すっと、起きて様子を見ている
妻は心から眠ることをやめたのだ
 
6年の間に、ボクは生きることに慣れてわがままにさえなった
一人にしてくれ、本が読みたい、出かけたい
暫く考えてから妻は、いってらっしゃいと言う
どんな時間に帰ろうと、妻は眠っていない
ボクが生きていることを確認して、また布団に戻る
布団に入ることと、眠ることは全く違う
 
娘が小さい頃から妻は眠っていない
息子が生まれてからは、更に眠っていない
『あぁ早く、大きくなれば眠れる』と妻は言う
睡眠不足を育児のせいにして、いつも寝不足の妻
ボクは胸が苦しくなる
ボクがいる限り、妻に気持ちの良い眠りは赦されないのだ
ボクは眠れば何をされようが起きない
子供たちが騒のを妻は一人で抑えてボクの眠りを守る
守るべきはボクの眠りではないのだ
『少しだけ眠らせて・・』妻がホントにたまに言う
息子はすぐにボクに飽きて妻を起こす
『あぁ、ありがとう少し眠れた』妻は言う
ウソだ!と叫びたくなるが何もいえない
 
ボクが眠っている間、妻は起きている
ボクが起きているときも妻は起きている
こうして起き出しているときは、きっと起きている
わずかな物音も聞き逃すまいとしている
そんな習慣は悲しい
その習慣がなければボクは生きていいない
 
わずかな眠気があるとボクはすぐに眠る
その間に、もしかしたら妻も眠るのではないか、と浅はかに思う
そして、やっぱり妻は起きている
 
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こうしている間に、実家の母も起きている
6年半前のあのときに母も居たのだ
遠く離れているが、夜中のボクからの電話には必ず出る
外出するときは父が起きて「来るかもしれない電話」を待っている
父は夜が弱い、その圧力や計り知れない
ボクは、自分の罪深さに愕然とする
そして、その存在に胡坐をかいて、つまらない電話をするのだ
父も母も文句一つ言わない
話している・生きている、その事実が眠らない辛さを凌ぐのだという
電話が来て嬉しいとさえ言う
ウソだ!と叫びたくなるが何もいえない
 
ボクの心の平穏というのは、つまりボクが創り上げたもので一つとしてないのだ
全ては妻と家族の眠りを犠牲にした、危うい均衡であるのだ
きっと、ボクはもう大丈夫だ
そう言っても、心からは誰も信じないと思う
妻は眠らないし、両親も電話を枕元にして寝ているだけだ
その習慣は日課ではなく、家族の血の中に流れているのだ
その悲しい、何も見返らない習慣がボクを生かしているのだ
 
今日こそは、今日こそは、と眠りにつくが、すぐにおきてしまうことが多い
ボクはわがままだ
自分の体調を楯に、皆を振り回しているのだ
だからこそ思う
ボクでは出来ないから流れ星に思う
 
どうか妻が眠れますように
 
寝癖も目やにもすごいほどに、妻が眠れますように
その眠りを、いつかボク一人で守れますように
コレは星に願わない
ボクの希望であり目的であるのだ