MelancholyDampirの日記

ウツな人の独り言

もう1年になるか

2010年2月6日の記事は未だに鮮明に憶えている。
忘れられないという意味での「憶えている」である。
ボクは実家が二つある。
幼少の頃、多忙な割りに貧乏神が食いついて離れない両親に代わり、幼いボクを育てた両親がいる。
その家の父親が死んだのが昨年である。
近く一周忌があるらしい。
飛んでいくのが、(育てた親への)息子の本分であると思う。
しかし「会社を休んでいる」という立場上、逡巡している。
更に、いつもの通りカネがないのである。
「立場」など放り出して、借金してでも行きたい。
友人にならそう奨めるだろう。後悔はするな、飛んで行け!というだろう。
 
ボクのカネなんて一円だってない。
全ては妻子のためのカネである。
東京まで往復で最低5万はかかる。
それがどれほどの高額で貴重かは、妻の節約振りを見ていればわかる。
妻は言う。
『行けばいいじゃん!?会社だって法事に口出しは出来ない!』
今日は通院で医師も言った。
『考えすぎだよ、遊びに行くんじゃないのに何を迷うの?』
 
迷っているんじゃない。
カネのせいにしているだけなのだ。
あの父さんの墓前で、情けない姿など見せたくないのだ。
墓参りするときには、立派な酒の一升も持って、墓にたっぷりとかけてやりたいのだ。
そして心行くまで墓石を磨いて磨くのだ。
隣人の墓地が汚かったらまとめて洗うのだ。
隣人も気持ちがいいだろうし、何より父さんの眠る場所が寂しく汚れていてはならんのだ。
そこに、薬を飲んで虚ろな目でニヤニヤと現れてはいかんのだ。
 
反吐が出るナルシシズムであると思う。
だが、死者に対しては敬意を示さなければならない。
毅然として「大丈夫なんだな」と安心させなければならない。
 
信長は実父の位牌に灰を喝と投げ入れ、後世で「乱世の武人」と評されたらしい。
ただのとんでもないバカヤロウである。
桶狭間で今川の大群に対し、抜群の狡知と策謀で少数で勝利したとされる。
ただの「運」である。
たまたま今川が「今日は痔が良くない、早めに休むか」というところだったこともありうる。
痔がひどければ歩くのもままならない、馬に乗るなんてヒー!お助け!である。
信長の英雄伝説は「臣下の反逆」という結末であっけなく終る。
明智は「勝者の歴史」の中では、つまらん小人物とされる。
一方で「後方勤務を着実にこなし部下の信望も篤かった」という歴史家も多い。
ボクはそっちを信じたい。
「敵は(信長)本能寺にある・・」そう聞いて「は?あんたバカ?」となった臣下はいなかったらしい。
目立ちたがりの秀吉を厚遇し、縁の下の明智を冷遇した。
明智の臣下こそ「主君の名誉のために立った漢(おとこ)達」であったと思う。
明智は秀吉の「調子ぶっこきザルのただの逆ギレ」に敗れ、歴史に汚名として残った。
だが、秀吉のアホっぷりは周知の通りである。
自分に媚びる奴を重用し、日本全土統一も途中なのに朝鮮にまで出兵するサルっぷりである。
だから、臣下に官僚制をいち早く導入して
「オレが死んでも後輩がいるから安心だもん」という家康の余裕の前に惨敗したのである。
 
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話が逸れたか?
ボクは強敵は要らない、逃げられるなら逃げたい。
ホンネでは巻き込まれても敵にはなりたくない。
「強敵とかいてトモと呼ぶ」ほど自分に自信がないしケンカ好きではない。
コレが家族だとそうも言ってられない。
ウツが強敵であろうと、ヒザを屈するわけにはいかんのだ。
土下座してもどんなに恥ずかしくても、死なないためには生かしてもらう方策を考えるしかないのだ。
薬の副作用が強くても、眠いだるい生きたくない、で済ませられないのだ。
家族を「守ろう」などとは考えていない。
せめて見守るためには、とりあえず生きていくのが男であろうし、いつかは支えたいのである。
そして、同じウツ人がクスッと笑える場もつくっていきたいのである。
おこがましい。欲張りである。
 
同じ年の友人が数年前死んだ。
同じウツ人であった。
可愛い子供を残して無念であったろうと思う。
その娘さんが暗い顔をしてブランコに乗っていたときに、ボクは娘とジャングルジムで遊んでいた。
『お父さんの友達なの?』
 
「うん、お父さんはすごかったよぉ?」
 
『お父さんは・・○殺・・したの?』
 
「病気で死んだんだ!とっても怖い病気だよ?」
「誰だってすぐに負けちゃう病気だ・・でもね、お父さんは仕事も頑張って、何年も闘ったんだ」
 
「そうなんだ」
そう言って娘さんは笑顔でおにいちゃんのトコへ走って行った。
 
死んでまで持っていくものなどありはしない。
生きているものは、死んだヒトの分まで生きようっていうずるさを持っていいと思う。
ウツ人でいいじゃないか。
生きている、それだけで十分じゃないか。
 
お前は元気か?まだ心配なんだよ・・
 
そんな思いを「墓で眠る父さん」にさせたくない。
そんなくだらん、おセンチな了見である。
らしくない記事ですまない。