MelancholyDampirの日記

ウツな人の独り言

事実に言葉が追いつかないこと

通院してきた。
主治医のところである。
 
話はさかのぼる。
会社(の産業医)が紹介した病院は会社の近くにあり、うちのメンタル系はそこに押し込んでいるらしい。
評判は良くない。
ボクは妻と再三はねつけたが、会社の持つ「最後に決めるのは君だ」という見えないがしっかりした力に気圧された。
そこのドクターは女医であった。
おそらく一般的には「美人で知的」なヒトなのであろう。
初診から「あなたの主治医は誤診です」と言った。
強めの薬を出すから!と奨めてきた。
仕事にならなくなるから、と断ったが一応受け取った。
女医は言った。
 
『仕事!?行ってるの?』
 
精神科に来たらバイトでも社員でも・・勤め人ではいけないのか?
 
生活や家系から辛辣な質問が続く。
 
『結婚してるの!?子ども!?』
 
ボクがあなたの基準にあてはまらないのが異常なのか?
あなたの見てきた患者だけが全てではない。
 
ボクは一応会社への義理は果たしたと思い、そこへの通院はやめようと思った。
信頼のある主治医を捨てて精神科を美容室のように換えることのどこに意味があるのだ。
が、会社は不服であるらしく、産業医(つまりグルだ)を同行させた。
女医は言った。
 
『入院という選択肢もある。通院ではできない治療もできる。』
 
産業医も女性だが、主治医を無視してコレに乗ろう、と思ったらしい。
 
『電気治療や今までに経験していない治療法もあるからさぁ、私は試して欲しいな♪』
 
他人事である。 中年の「♪」は健康なヒトでも滅入る。
恐らくオエラに言われ、どうにかどこかへ入院させてしまえ、ということか。
 
イメージ 1
 
ボクは昨日、主治医のところに行った。
(また産業医たちがついてきた・・・というより予定になかった通院を時間指定で強制させられたのだ)
不慣れな北海道で、父親はボクを乗せて運転した。
母親も何か力になりたい、産業医に入院させられては・・・と付いてきてくれた。
 
主治医の前で、ひとりボクは言葉にならなくなってしまった。
発病して受診したときには遅かったこと・・
初めの一年は戦争だったこと・・
明日も判らぬ中で良く生きてきた、生かされてきたこと・・
ここまで来た自分の道がなぜか・・信じられなくなってきたこと・・
ボクはどうしたらいいんだろうか・・
入院しなければ、また圧力がはじまるのか・・・
いや、もうフィナーレは流されているんだ・・
ボクだけが知らないで何かが掴めると信じて・・
 
イメージ 2
 
涙が流れた。目を伏せた。
 
 
主治医はボクに注射の指示を出し、勝手に押しかけた上司と産業医との面接に入った。
珍しく主治医の語気が荒い。
 
丸一日のように長い時間が流れた。
産業医も上司も難しい顔をして出てきた。
 
上司は言った。
「お前は・・こっちの病院がいいんだな?・・それでいいじゃないか?」
そして言いにくそうに、また休んでもらうことになる・・もうオエラは決めているからということを示唆した。
もう勤め人としての選択肢はない。
沈黙。
 
産業医はまだ目をぎらつかせて言った。
「ここの主治医は電気治療の最先端を知らないでしょ?」
「入院してあなたに入る最新の情報も沢山あるでしょ?ね♪」
 
ボクは切れなかったが、語気はあえて強めた。
 
「入院して得られる情報とは、つまり投薬とか治療です」
「その情報が正しいのか否かを、患者は決める権限はないんです」
「通院と入院は大きく違うんです。入院したら診療の自由というものはないんです」
「投薬の副作用が強すぎても、電気治療で脳波に異常が起こっても、患者は断れないんです」
「ここの・・主治医は・・ボクは信頼しています・・・入院は何も好転させないと言いました」
「悪くなりたくて入院するヒトはいませんよ」
「ボクが得たい情報があるとすれば・・あなたが何を望んでいるのかです、ボクを悪くさせたいのですか」
 
上司が制した。
産業医は喰いつかんばかりの目をしてにらんでいる。
 
ボクはなぜ相手をヨイショできないのであろう。
もっと器用なうまい言い回しで穏便に済ますコトだってできたじゃないか・・。
でもできなかった。
ウツ人に限らず、患者をモルモットのように考えているヒトはおそらくモルモット以下だ。
 
上司は最後に言った。
「明日、家族で会社に来い!」
「折角ご両親も来てるんだから、挨拶に来い・・」
「いや・・オエラが勝手に決めたんだ・・オレも・・なんだか・・その」
上司にも何度も裏切られているがここまで・・と吐き気がした。
 
また言ってしまった。
「会社の説明、挨拶ならボク一人で十分でしょう」
「妻はボクの家族ですから、百歩譲りましょう」
(上司の顔だって立ててやらなければ・・)
 
「両親の同席強制に何の意味があるんですか?」
上司は黙った。
ボクは黙れなかった。
「失礼ながら、「会社としてやるべきはやった言うべきは言った」そういう説明責任の場として・・」
「説明はしたぞ!多くの家族に同意を得たぞ、文句はないな!そういう安全を買いたいだけと感じます」
 
自分を削ってきたつもりだったが、手足から血など流れなかった・・
多くを失ってきたつもりだったが、最初から何も持っていなかった・・
 
上司達の乗る「黒塗りの車」を見送りながら頭を下げている両親を見ていられなかった。
ごめんよ。母さん父さん、そして妻と娘と息子・・。
どんなに言われたって、苦しくたって、ボクがもっともっと、もっともっと、もっともっともっともっと・・。