オエラの常識
オエラさんが何かボソッと言う。
仕事に関することなら直後からバタバタっとみんなが動き出す。
そうでもない、仕事とは関係のないことでも動き出す。
こちらはスーッと足元から生ぬるい空気が這い上がってくるように伝わっていく。
時期ハズレの模様替えとか掃除とか、机の中身検査とか。
言う方もそうだが、ソレを受けて実行する方もいい面の皮だ。
小学校レベルで何とも恥ずかしいのである。
オエラさんは個人に対してもボソッと言う。
大抵は対象本人より、上司に言う。
そして翌日か数日くらい後に、上司から本人に『・・・してくれ』と、なんじゃソレな指示が出される。
同僚が、急に床屋に行っていたり、机を片付けていたり。
ボクは会社にあまり行かないし、言われてもヘラヘラしているので、逆の現象が起こる。
まずボクが言われているのに「ハイ?ナニ?」なので、ちょいと怒ったオエラが上司をねちくるのだ。
上司は元来ねちっこいので、言い方がもっと遠回しになり、やっぱりボクは判らないのである。
オエラ『面白い指輪してるね?』
ボク 「結婚指輪です」
オエラ『面白いクサリをジャラジャラしてるね?』
ボク 「仕事のカギ束です。携帯のこれらはお守りのストラップです。2個だけです」
ウツ人になってから、少ない知人友人が「護身」としてお守りをくれた。
財布に今も入っており、携帯のストラップ型はずっとつけてきた。
しかし外せという。上司に聞くと「目障りらしい」からだ。
「らしい」ことに対して・・なぜか・・・外した。
そんなことで上司が不憫だし、何よりオエラの機嫌で仕事は大きく異なるのだ。
お守りをくれた親友に全く申し訳ない。
もしボクが不慮の死に方をしたら、お守り剥奪の責任はとってよ?
指輪は・・・目障り「らしい」が、外さなかった。
当たり前だ、常識をころころとオエラに創られてはたまらん。
今は指輪を増やしている。
結婚10年ごとに増やしていく予定だ。
この前オエラにやっぱり直(じか)に言われた。
オエラ『かっこいいスーツ着てるね?』
ボク 「はい、ありがとうございます」
オエラ『かっこいいスーツ着てるよねぇ?』
ボク 「はい、ありがとうございます」
オエラはオーダーのスーツにピンクのYシャツとか着ている。
ボクは褒めなかった。ウンチクが長いので嫌なのだ。
ボクのスーツは全て古着だ。
5,000円を越えるものは1着、あとは千円が2枚ほどの代物だ。
それでも茶色とか着ているからか?目立つらしい。
他にもっと目立つスーツはいくらでもいるじゃないか・・?あぁ、ボクだから言い易いのか。
スーツは・・・脱ぐわけにはいかないなぁ。
次回会社に行ったら、何と言われるか。
もっと小難しい仕事の打ち合わせでこそ悩みたい。