誰だチャングンソク
カード会社から妻宛に手紙が来た。
『お誕生日おめでとうございます』
誰だこのイケメンは!?
アイラインを引きすぎたビジュアル崩れみたいな中性的だが多分男が花束を差し出している。
マスカラが流れたのか?と思ったが違う。
やはり男だ。
妻に聞くとチャングンソクなる半島のスターらしい。
今までのマッシブ路線とは異なる、新たな半島商品らしい。
妻が言う。
『ホラ、あんたがさ、だいぶ前に「なんじゃこの整形しすぎて表情ないのは?」って言ってたヒトだよ?』
『(名前が憶えられないから)軍足だから・・軍手でいいよな?って言ってたじゃん?』
あ、グンテさんでしたか。
失礼だが覚えていない。
あ、あのラルクのボーカルに似せて創ってください、という模造品か。
良く見る。
技術革新は日々続いているが大したものだ。
自然に笑えるようにまでなったか。
さっきまで立ち読みしていたが、確かにグンテさんはかなりの率で表紙だった。
ジャニーズが韓国支部を作ったのかと思ったが、これも違うらしい。
イケメンの時代はめまぐるしい。
『お誕生日おめでとうございます』
ヒトサマの妻に対して何たる横暴ぶりか。
ファンクラブからの会報なら納得もするが、ただのDMに乗っかってその言い草はナンだ。
くたばれグンテチャン。
だいたいからして、誕生日にはほど遠いのだ。
呟く。
「つまり、誕生日の記念にしっかりと整形をして、新しい誕生を!ってことかな?」
妻は台所で言う。
『・・・整形とは関係ないと思うし、まぁイメージキャラなんじゃない?』
イメージが悪いのではイメージキャラではないのでは。
日本は小さな島国で、世界的に見ても「人種としての顔」の認知度は低い。
ボクは北海道で「くどい顔」と言われる。
でも、きっと沖縄では「つまらない顔」と言われるのである。
失礼な分け方ではあるが、ボクも白人など区別が付かない。
北欧とドイツの区別はかろうじてつくであろうが、きっと米英は判らない。
向こうも同じで、嵐の一人とグンテさんを取り替えたところで何の支障もないだろう。
だからこそ日本のメディアにはもっと意識して欲しいのだ。
「この人は日本人ではありません」そういう注意書きが欲しい。
いやいや、人種差別ではない。
「この写真はイメージです」と書いてくれないと勘違いする旅行のガイドと同じだ。
グンテさんを理想にして、そういう顔を探されては日本人が迷惑なのだ。
ああいう顔は自然には生まれない。
人形を可愛がるようなもので、実在しない理想への憧憬なのだ。
妻が言う。
『あんたね。メガネ市場のヒトも「ペ」一文字のままだったし、そろそろ憶えなさいよ?』
憶えたよ、グンテさんでしょ。
本名より愛称のほうがボクは覚えるのだ。
韓国へ帰れとは言わない。
円を稼いだら、母国に投資して欲しいとだけ言う。