MelancholyDampirの日記

ウツな人の独り言

化石掘り

娘は恐竜が好きだ。
その流れで化石も好きだ。
将来は「化石を掘るヒト」になりたいのだそうで、実に具体的である。
古生物学を開講している学校というのは少ないので、ボクは早めにベクトルを逸らそうかと画策している。
「ちちが埋めるから、ソレを掘ればいいっしょ?」
『ソレはズルじゃん!?ダメだよ?』
確かにズルだが、そんなズルが第一人者だった時代も最近。
はじめは本当だったのに、プレッシャーからズルに走っただけかもしれない。
ズルなんてたったの一回だけだったのかもしれない。
信頼は10年・ウソは1瞬、どうにも現場からしたらやりきれないかもしれない。
 
ボクも小さい頃「化石掘り」に誘われたことがある。
ジャージの上下にスコップとシャベルと刷毛とか色々持っていった。
採れるかどうか判らない、という姿勢であったが友人は「必ず出る!200%出る!」と言う。
だから理科とくに生き物に詳しいハカセみたいなのも連れて行った。
5人ほどでどんどん住宅地に入っていく。
どこまでも住宅地で、その一角を入っていくと採石場?はあった。
コンクリの臭いがまだ生々しく、アスファルトは夏場の日差しを浴びて良いニオイを放っていた。
ボクはアスファルト臭がたまらなく好きである。
『マスクしろ?』
『よーしガシガシいくぞ?』
化石堀りは、繊細なイメージがあったが、友人達はツルハシやら剣先スコップで現場さながらだ。
そんなモンか、と思ってガシガシとコンクリを掘っていった。
数十分後。
『出た!早速出たぞ!魚だ!』
ウォォ!と雄叫びを上げて第一発見者をたたえてブツを見る。
化石と呼ぶにはあまりに生きているような色鮮やかな魚であった。
『もうすこし削ってみよう』
ウロコまで鮮明になり、目玉もそれとなく生きているようだ。
大発見!
そんな言葉を誰ともなく発し、みんなで新聞に出るかもしれないと思った。
現れたのは、はじめて見るような、それでいてどこかで見たような魚であった。
 
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『ピラニアだ!』
『こんな形はピラニアだ!』
『アマゾンと日本はどっかの河でつながっていたってことだべ!?』
『そんな昔の地層だったのか!?』
みんなで足元を見る。
どこまでも敷いたばかりのコンクリで、コンクリの下からはコカコーラの空き缶とかが出てきた。
『コレ・・コンクリじゃねーか?』
そうやって多数決で反対するが、頑強なものもいる。
『地層は何かの弾みで隆起して、時代が前後するのもあるんだ!』
妙に納得。
『そうか!つまりコカコーラの地層にアマゾンの頃の地層が盛り上がったんだな?』
学校で間違って学ぶとこうなる。
コカコーラの地層って何だ?そんな疑問は一人を除いて誰も持たず、次々にピラニアをゲット!
『オイ!赤いピラニアだ!タイかも知れないぞ!?海だったんだ!』
ハカセはとっくに真実に気付いていたが、言える雰囲気じゃなかったらしい。
 
いい加減に「あまりに大量な化石」に不審を抱いたボクたちはハカセに聞く。
「これは、コイじゃねーのか?」
ハカセはうなずく。
『マゴイとヘラブナだね・・・ピラニアじゃなくてヘラブナだよ・・?』
『赤いのはコイだね。タイじゃなくてコイの赤いのが大きくなったんだじゃないかな?』
『金魚っぽいのがあるけど、多分コイの稚魚だと思う。夜店で売ってるやつね?金魚じゃないアレね?』
何だと?コイとフナと金魚だと・・?
新聞はどうなる。大発見はどうなる?
みんな化石掘りに誘った「張本人」を見る。
彼はバツが悪そうにもじもじしている。
問い詰める。
ひどいもんだ。さっきまで英雄だった発見者は今や疑惑の渦中である。
彼への尋問はやめて入ってきた住宅地を見やる。
 
『○○釣り堀』・・そういう看板が裏にしておいてあった。
 
そうか、確かにここには釣り掘りがあった。
そしていつからか忽然となくなったのだ。
いきなり埋めて店を畳んだ。それだけのことだった。
沈黙。誰も悪くない。
頭が少し悪かっただけだ。
ボクらは、何となくできる限り掘って、近所の山に埋めた。
『魚魂の碑』・・ハカセがそうやって書いた。
やがてその山も住宅地になったが、あの化石たちはどうなっただろう。
今も思い出すと、あのハカリが浮かぶ。
 
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コレに釣果を引っかけると、性格の良くなさそうなおばちゃんがやってきて
『ハイ!0.7キロ!』などと言って、70円分の券をくれるのだ。
ビッチビチと魚がビクの中で暴れるので、ハカリは大きく上下する。
おじちゃんは「その中間」でポイントをくれるのだが、おばちゃんは渋かった。
一番下!のところでポイントをくれるのだ。
70円分が一回の釣り券になるまでには時間がかかる。
やっと貯まった!頃には券自体が新しくなっていて『ソレは使えない』と言われる。
悪徳商法であったが、ボクらも券を偽造していたので、大きくは逆らえない。
化石採石場を後にしたボクらは「絶対に使えない券」を宙に捨てた。
競馬で負けたみたいだ・・・ハカセがぼやいていた。