眠りのシッポ
トカゲは尻尾を切って逃げるらしい。
もともとそうやって生き長らえ、進化してきたのだから生き物は凄い。
人間は、尻尾を掴まれて本性や悪事がばれたりするから、
おそらく尻尾が本体であり本能であるのだろう。
尻尾を出さない人、尻尾が見えない人はいるが、背後に目があるわけではないので、
尻尾を掴ませないのではなく、尻尾がないのであろう。
本能で生きてる人や、感情で生きてる人である。
こういう人は大抵、タヌキとかキツネであり、尻尾以前に人を化かすことを生業としている。
丸出しの尻尾を武器にしているタヌキ逹を相手にしてはいけない。
彼らの尻尾は罠であり、どうやら旨味がありそうな話に尻尾がついているケースが多い。
いや、それしかない。
「あいつはタヌキだ」と気づいた時点で化かされており、金やモノは葉っぱ以下のゴミになる。
タヌキは自慢話や太っ腹が売りで関西に多いらしい。
キツネは細身で謙虚なフリで上手く化かし方が判りにくい。
こちらは関東に多いらしい。
どちらにしても、尻尾を掴まれてはたまらないし、掴みたくもない。
さて、眠るのは難しい。
ウツ人なら言うまでもないが、眠りにも尻尾がある。
うとうととして、これは尻尾だ!と掴むと違うのだ。
葉っぱやゴミならましな方で、大抵は不安や心配、絶望や孤独感である。
あるいは起きてもいない未来の不安が現実を食い潰すと云う、妄想なのであるが、
これは現実を喰らうぐらい獰猛であるから、ウツ人の眠りなど朝飯前に食う。
羊など、数えるそばからラム肉として腹に収まり、夢の味見をしているバクなどもまるごと喰らわれる。
眠りの尻尾を探していると、輪郭のないソイツは尻尾だらけの醜怪な姿に変化する。
眠りの尻尾を探していると、輪郭のないソイツは尻尾だらけの醜怪な姿に変化する。
無数の尻尾を掴まえては嘆息している間に朝日が差し込むのである。
ボクは連日、この尻尾を見ないようにしているが、
ボクは連日、この尻尾を見ないようにしているが、
強い眠剤を飲み、眠気に任せて横になると、
べろべろん、とソイツはやってくるのだ。
眠剤は武器にもならず、
一日がかりでやっと貯めた「明日への希望」もバリバリと頭から喰われる。
こいつめ許さん!
と息巻いても、ソイツは強いか強がりかを判別する事に長けている。
ボクは強がりで弱虫だから、大好物らしく、
最後の楽しみに置いておかれ、放置プレイとなる。
ボクはドMであるらしく、眠れない痛苦を楽しみだし、さあ殺せ、
と言うとソイツはいなくなる。
悪いやつだ。
今日も尻尾探しだ。眠りの尻尾を掴まえろ!