MelancholyDampirの日記

ウツな人の独り言

約束と暴走族

機械仕掛けの全ての若者に送る。
 
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 暴走族が恰好良く、そして悪かった時代。
別に恰好良いから族に居た訳じゃない。普通の教育がつまらなく、かと言って一人で居るのも淋しくて、最初の理由は普通だった。
 あの時、俺が何故ソコに居たのか?一人でボロ布みたいになって寝ていたのか、兎に角、見慣れないトコで嫌いな「大人」に見守られていたらしい。全身の擦傷と見られたくない嫌悪、見えない痛み。
「傷は見るな!ケツも・・暫くは忘れろ。」
茶店らしい。ヤニ臭くコーヒー臭い。このオヤジまで古臭い。俺は言葉が出せなかったし、ケンカの結果だろうことは想像できた。
「可愛い小学生かと思えば、中学生か。金は何も・・・テレカもない。随分な・・だな。」俺はチビだった。どうやら知った国鉄の駅前。
「金・・貸して下さい。一区間でいいです。」この駅前はR一六を流す族なら必ず通る処だ。古い商店街に混じって、若い歓声が掛かる、族が恰好良く騒がれる、数少ない処だ。歩いて帰るか、と決めた頃、オヤジは金持ちのお年玉以上の金額を渡した。大人って甘いんだと思いながら、借りはすぐに返したかった。「この倍は返します。有難う・・すぐに・。」オヤジは喋るなという顔で話し始めた。
「再開発だ。キレイになりゃお前ら暴走族は益々、え?見りゃ判る・・。子供ってのはそんな殺気だった目はしないもんだ。金?病院が先だろ。何?どうしても?・・どれだけ掛かってもいい。暴走族がどれほど迷惑か・・止めてみろ。この辺を走るのを全て止めてみろ。出来ないのは承知だ。ココはあのグループの楔だろ?ケンカ、警察ばかり、見ろ。古くからの商店は閉店。とばっちりももう限界だ。」俺は、厳しくて楽しくて・・恰好悪すぎた。
 
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 十年と掛けずに俺は大半の族を潰すか、解散させた。結局「同類が欲しい淋しい集まり」だ。デマを初めとした情報だけで互いに疑い、共喰いを繰り返す。いつも中良しなんてそんなもんだ。進学を決めた奴までいた。背が伸びてタバコも様になった俺は恰好がつけたかった。借りは返した。駅に着いた。
 あの喫茶店だけがなかった。あの頃の角度で見てもここに違いない。歩道橋までそのままだ。俺は帰る気はなかった。古そうな花屋で、すぐに引っ越したと知った。次は交番。大嫌いだが入って、過剰な演技で聞いた。大人って甘い。営業スマイルの警官は言った。
「で、その店の人とどういう関係なの?。」
やっぱり大嫌いだ。ゴタついた交番を後にして少し探したが見つけた。古いアパート。
 見た顔の奥さんに、自慢げに経緯を話し始めた、が、喋るなという顔をされた。
「死んだよ!もう何年も前さ!探せば家中。」
疑う余地はなさそうだ。女一人、そんな空気。
俺は交番に戻った。別の男がスマイルで話す。
「死んだって?知らなかったなぁ・・。それで君は息子さん?親類?どういう関係?。」
大嫌いだ。まるで容疑者じゃないか。そこは流して、丁寧にこの辺の族について尋ねた。
「昔は凄かったらしいね。でも今はR一六も開けたしルートも変わったし。君、暴走族に興味あるの?入ろうなんてな。ハハハハ。」
俺は無言でニヤついて外に出た。美味いコーヒーが飲みたかった。あの店のような味の。
 古そうな喫茶店を見つけて一服した。常連客そうな若者と年寄り。両極端な客層だった。
俺の素性はすぐバレて、見たくないバッジのスーツの連中が来た。俺は殺されるらしい。海を前に俺は覚悟した。死ぬ。彼らからすれば約束は「掟」だ。バレたのは俺の手落ち。
 死んだはずだった。あのオヤジが前に居た。
「お前より前に暴力団と約束していたんだ。俺が連中の一人を殺して・・傷害致死だがね。もし生きて出てきたらこの辺から手を引くとな。ホラお頭がおいでなすった。」俺を囲んでいた連中はすぐ殴り倒された。俺の約束より前に同じ約束があった。それだけだ。オヤジは金を返せといった。金額まで憶えていた。