お前が夢を掴め
仰々しいタイトル、すみません。
きちんとタイトルと関係ある記事にします。
北海道は紅葉が見頃・・・ではなくもうすぐ終わる。
北海道の秋は駆け足である。俊足である。
100メートルなら7秒くらい。
世界記録など狙ってもいない。
写真家はテントを張って頑張っている。
理由は「明日来よう」などと言っていたら、散るからだ。
今週末は「落ち葉掃き」という行事がある。
落ち葉はゴミだ。
それも雪が降る間隙を狙うから感激も風情もない。
落ち葉掃きより、雪が先だと、凍結保存の落ち葉が春先に出てきて迷惑する。
落ち葉は敵である。
通っている精神科の敷地紅葉があるが、実に赤い。紅い。
絵の具より紅いと思う。
松は常緑樹だ、などと思っていると、きちんと黄色くなってバッサリと落ちる。
松の落ち葉は厄介だ。
こういうのを入院中の方々は見ているわけで、翌日には一枚もなかったりする。
精神的にどうなんだ、と思ったりする。
平安時代は、松＝待つ、秋＝飽きなどと掛けていたから平和だったんだろう。
それで別れの秋などと雅なことを申しているが、平安時代はもっと浅ましい。
別れないと次の異性に行けないから別れる、そんなもんである。
東京の電車を使っていた頃は、一年中「別れたがり」がいた。
改札を抜けて、別のメトロに乗り換えたりするそのわずかな隙に「居る」のだ。
地下街の割と目立つ柱の陰で、物憂げな二人がうつむいているのだ。
男はにらむようで譲らないぞ、という面持ちで女を見ている。
女は、ひどいとか、嫌だよとか呟きながらさめざめと泣いている。
絵にならならずに迷惑だと思うのは、二人して不細工なのだ。
ボクは方向音痴なので、目的の電車にたどり着けず、徘徊する。
すると5分前と同じ格好で別れ話をしており、もつれているな・・と思う。
30分を経過しても、まだ別れていない、こうなるとお節介になる。
ドラマの後半の5分を観てしまったばかりに、気になり、トイレにも行けず、
こっちは忙しいんだ！早くラストを教えろ！というようなもんである。
話しかける。
「いつ別れるんですか？」
男も女も言う。
『あんたに関係ないでしょ！？』
いやあるのだ。
説明する。
「ドラマしているんだろうが、迷惑ですわ！」
「たまにキスなどしているが、そういうことは二人きりでしてくれ」
「昨日もいたよね？何で毎日同じとこで、そういうドラマするんだ」
「美男美女なら、皆チラッと見てドラマティックにもなろうというもんだが・・」
「あなたたちみたいな不細工がやっても、野良犬がケンカしているみたいで見るに堪えない」
二人とも顔が紅葉している。おそらく怒っている。
ボクはもっと怒っているから止まらない。
『あんたには関係ねぇ！！』
男が甲高い声を上げる。
帰路の社会人が見る。ボクはやめればいいのにもっと怒鳴る。
「不細工同士がくっついているうちは平和なんだ」
「ソレが別れて、放逐されるとなると、ちと、いやいやかなり困る」
「不細工な男は、次！とばかりに普通の女にちょっかいをかける」
「ブスな女は同じく、次！とばかりに普通の男にちょっかいをかける」
「それでまたすぐに「ドラマ別れ話」に巻きこまれる、だって好きなんでしょ？そういうの」
「みんな関わりたくないのに！別れられると関わる可能性が出る！迷惑！」
「いつ別れんの！？え！？」
二人は抱き合ったまま消えてしまい、ボクは取り残される。
それで友人に会ったときに「逆切れされた」と愚痴ると、友人はそりゃ違う、と笑う。
『お前が勝手に切れてんだろ？ほうっておけよブスなんて・・』
聞き返す。
「じゃぁそのブスがお前に惚れてしつこく来たらどうする？」
『怖いな・・マジ怖い・・・』
ふと見ると別の別れたがりがドラマを演じている。
よっしゃ！と友人と二人で、向かう。これじゃチンピラだ。
脱線。
良くヒーローもので、崖から落ちそうな仲間を手だけで助けているシーンがある。
助けている方は大したことなく、落ちそうな方が格好よかったりする。
『待ってろ、今、引き上げてやるから・・！』
「いや、俺はもうダメだ。お前だけでも助かれ！」
『何を言ってるんだ！！一緒に夢を掴もうって言ったじゃないか！？』
「・・・」
『二人で夢を！』
とくどくどと言っているから握力がなくなり、間が持たなくなる。
そして、落ちちゃいけないほうが、手を振り払って落ちていく。
そして驚くことに「落ちながら」叫ぶのだ。
お前が夢を掴め！！
と。
その後、「お前はもう、一人で夢を掴めるんだぜ？俺はいつでも見ているぜ？」
と落ちたほうの最後のセリフまで妄想でつくってしまう。
落ちたから死んだわけでもないのに、だ。
コレが「一人に沢山ぶらさがっていた」ら、どんなセリフになるか・・。
「とっとと離せぇぇぇぇ！！」
ホンネだけの世知辛いワンシーンになるだろう。
それに「ぶらさがった一人一人」がいちいち名セリフを吐いていたらそれこそ握力と間が持たない。
『お前との約束・・もう・・・』
『俺が看取ってやるって言ったのにな・・』
『俺の事は忘れて・・バカな奴がいたと・・・』
『最後まで助けようなんて・・』
『お前の手の温もりを俺は一生・・・』
『お前が夢をつか・・・・』
「とっとと離せぇぇぇぇ！！」
朝、バナナを食べようとして、みんなして首の皮一枚だった。
どれを食べようか迷った。
