難しいひとこと
ボランティアでもスーツの必要がある。
時間が不規則なので、街で時間をつぶすことがある。
本屋でもあれば良い。
本屋がなくても、いつも文庫を持っているので、良い。
つまり本さえあれば良い。
読了した本や、間違えて哲学書文庫だったときはボケッとしている。
道行く人を見る。
・・・
面白い。
きれいなヒト。
そうじゃないヒト。
神様、Good Job!と感謝したくなるヒト。
デッサンが、ラフから狂っているヒト。
親子で寸分の狂いもなく、同じところが狂っているヒト。
塗りで何とかしようとするヒト。
引き算せず、足しすぎたヒト。
何も足さず、引かず、グレーのTシャツさえも、ブランドかな?と見紛うヒト。
韓国系モデルか何かのファッションを真似たヒト。
顔までそうだから、かえって干潮が甚だしいヒト。
タバコがサマになるヒト。
タバコであるのにシャブ中にしか見えないヒト。
携帯をいじっているヒト。
キョロキョロしているヒト。
ボクは、ブスと目がよく合う。
おそらく両極端をを探しているのでそうなる。
似た様な顔かたちは、無意識に除外している。
ブスもボクを意識する。
ボクもブサイクなので、惹かれあうのだと思う。
ボクが見つめるから、ブスも気になるのだろう。
何人かのブスが、振り返ってまでボクを見る。
ボクもついつい見てしまう。
目が離せないほどブスなのだ。
何度も目が合う。
ボクもきっと、気になるほどのブサイクなのだ。
やりきれなくて、歩きだす。
男女ともきれいなヒトが多い。
ブスが目立つわけだ。
また、ブスと目が合う。
さっきのブスの中にいた、とびっきりのブスである。
ブスの印象は、トゲのように抜けないから憶えている。
距離が近すぎる。
何か、何か・・言わないとならん距離だ。
『なんでしょう?』みたいな仕草をブスがする。
仕草までブスだ。
何か言わなきゃ!と強迫観念に縛られる。
「いやぁ・・見事なブスですね」
褒めたのだが、絶対に明らかに褒めていないのだ。
ブスが怒り出した。
ブスはふくれるとお茶目で可愛いと聞く。
ますますブスじゃないか。
「いやぁ・・・ボク、ブスが嫌いじゃないんですよ」
ウソではない。
ブサイクは、ブスを嫌っていては、生きていけないのだ。
が、これも褒めたのだが、絶対に明らかに褒めていないのだ。
足早に退散した。
「ブスって言ってごめんなさい」
そう言うべきだったか否か、今になってはどうでもいいが、少し悔やまれる。
スーツがいけない。
スーツと云うのは、ブサイクが着ても変質者にしか見えない。
私服のときに謝ろうと思う。