女にもてたい!
タイトルに間違いはない。
と云うのは、最近・・最近に限らずホモに間違われるからだ。
ホモやゲイにまで達観していなくても、男女問わず『彼は男の子好き』と評され、面と向かっても言われる。
ボク自身が「ブサイクな女ならキレイな男がいい!」と大声で言っているからだろう。
女からは白眼視され、男からは避けられる。
そんな目で見なくても、あなたたちを加熱なしで生で食べるほど、ボクは悪食ではない。
「貴女に付き合うなら、中国のユッケ食べ放題に行く!」と云う引き合いを出して、最近も無視されている。
ボクはもてなかった。
とにかくもてなかった。
女の子と話がしたい!もてたい!いや、まず話すだけでも、いや待て!もてたい!
とにかく小学校に上がって程なく、既に異性の色香に錯乱していた。
女子と話す話題がわからず、遠巻きにチラ見しては、モジついてニヤついていた。
そう、ただの気持ち悪い男子だったのである。
だから、ますます話す機会が減り、そのうちに女子が怖くなった。
幼稚園の頃、既にもてない素質は十分であった。
クラスのアイドル的なお嬢様に『ゴメンね・・お誕生会に呼べなくて』などと言われては凹んでいた。
「お前なんか!」と云う造形の狂った女子から、同じ事を言われると、なぜか腹が立った。
その場で即、輪廻しそうだった。
走るのが速いともてた。それだけの理由で走りに走った。チビながら速くなった。
好意と云う結果はない。
走るのが速い、それは幼少期だけのモテ要素、そう気付くには長い時間がかかった。
跳ぶのが格好いいと聞けば跳んだ。バッタより良く跳んでいた。
有刺鉄線を張って緊張感をあおり、もてないチームで大怪我をしながら高く遠くに跳んだ。
女子の好意は遥かに遠くまで跳んでいるのを知らず、やっぱりもてない。おかしい。
電柱を登り、高圧電柱にまで勇気を出して登った。
通報され、電気会社のおじちゃんにボクは捕まった。
ボクが捕まえたい女子は、見ていただけで逃げてしまった。
大人たちにお前らはターザンか?と言われ、黙った。
ターザンなら半裸の女にもてるではないか。
日夜、森の中で雄叫びをあげながら遊びまわり、住み着いていたホームレスから叱られた。
乞われるままに描く。何らの好意と云う収穫もな壊れるままに描く。
髪型でなんとかなるかも知れない、そう聞けばマンガやアニメをじっくりみた。
工作バサミで似たように前髪を切り、自身に満ちて登校した。
即日担任から呼ばれ、『誰にやられた?』と聞かれ、「自分です・・」と答える。
『ウソをつくなぁぁぁ!!』 と憤る担任を前に、神様、コレはなんの罪へのどんな罰ですか?と廻る頭の中。
鬼の形相の担任を前に、何をどこから話していいか判らず、ただ「自分です」と繰り返した。
(ソコ!笑ってないで、きちんと読みなさいよ。ボクは真面目に書いているのだ・・)
バレンタインデーは、ターザンをきっぱりやめて家にいた。
学校では、そんなところに何もないところまで隅々まで探しまわった。
校長から 『掃除がんばって!』とねぎらわれ、チョコをどっさり持ったハゲに嫉妬した。
はやくハゲたい!と思った。
チャイムが鳴るたびに玄関に駆け出し、弟へのチョコを預かった。
「コレ・・ゆか?・・ゆかりちゃんかなぁ?・・から」と渡した。怒る弟。
『ゆかりも、ゆかも、何人もいるんだよ!?きちんと聞いておいてくれ!』と叱られた。
弟からメモ紙を渡され、お返しのリストをつくっておいて、と指示を受けた。
下の弟も『ボクのも宜しく』と言った。
ボクはお前らの私設秘書じゃねぇんだ。
飛べない伝書鳩だって、いつか飛ぶからな、今に見てろよこの野郎!と、完全な敗者。
スタイルが悪い、と思いつき。チビだからと成長剤と信じて整腸剤を毎日飲み続け、通じだけは良くなった。
父親から 『オレの「強力わかもと」をどんどん飲むな!』と叱られた。
母親と近所のミキちゃんだけは、毎年チョコをくれた。
喜んで机に飾ろうとすると、同じような2つがホコリをかぶっていくつも並んでいる。
2つ、と云うのがゼロでもなく、理由も明白で、深く切なかった。
女子の口から「あの歌手が好き♪良いよね♪」などと聞けば、歌の練習。
自室にこもり、カセットデッキ相手に自分の歌声を録音し、自分の歌声を聞く日々。
修行だ。かなりの苦行だ。
容姿はどうにもならないと早々に「置いておかれ」、ついに声色模写にとりかかるわけだ。
CDもテープもなく、空で歌詞を憶え、メロディーを覚え、歌う。
やっぱり途中のメロディーも自分で歌う。
隣の部屋の弟達が、笑いを堪えている。
ゥウッ・・・オレもうダメっ・・す、などと吹き出している。
ダメなら聞いてないで出て行ってくれ!
マッチの愚か者を親戚の前で歌う。金欲しさと、もてたい病の末期症状。
親戚なら、欠点を見逃してくれるかもしれない、いとこなら結婚できる!と云う末期症状。
『お前が愚か者だよぉ!!』と嘆く弟。
こういうのは、もてなかったことがない、と云う弟だから言うのだ。
「幸せモノ」を通り越した「罰当たり」な男だから言うのだ。
トシちゃんほど体が柔らかくなかったし、ヨッちゃんほど笑顔ではなかっただけだ。
マッチならいける!そう思った辺りにすでに、もてない病の根深さがあった。
さて、この辺りで、個人的にトラウマの類だと気付いたから、続編は後日としたい。
カテゴリーは「子どもの病気」とした。
いいオッサンが「もてたい!」などとやっていたら、やはり病気だろう。
ただ、この「もてたい病」と云うのはどこの病院でも扱ってくれない。
小児科で扱うべき疾患だが、小児科では見向きもされない。
思春期外来になど行こうものなら、おそらく通報される。
だからファッション誌なんかが、「幾つになって消えない魅力」などと特集を組み続けるのだ。
男性誌だと「生涯現役!」などと書かれる。
ヒトは死ぬまで現役でヒトだと思うのだが、おそらく「現役」はシモネタの類で、現役=原液だろう。
お前はもう・・枯れている!
みんなもう・・知っている!
四十を過ぎた頃から、お年寄りや娘の友達から、もてるようになった。
『イケメンだよねぇ・・』などと云う、手遅れな噂を娘から聞く。
お年寄りと、小学生・・。
何を!どうしろというのだぁ!
と、思いながら、積年の想いが開花し、なぜか喜んでしまう。心から喜んでいる。
女は幼くても老いても、ボクからしたら全員、罪深い。