愛撫
AKB握手会で二人が裂傷を負ったという。
有名であるが故の、仕方のない負傷かと思いきや違った。
「AKBなら誰でも良かった」らしい。
もしかしたら自分だったかも・・と戦々恐々らしい。
アイドルとは偶像崇拝であるから、偶像には手をかけないのが常識。
常識の範囲外のことになる。
電車で会いに行けるアイドル。
偶像っぽくなかったからだろうか。
誰かがコスプレをして並んでいれば、そのヒトが負った傷かも知れない。
特別な怨恨もないが沸き起こる殺意。
そういう刃傷沙汰ばかりだ。
ボクはとんでもない事件があると、まず加害者の側になってしまう。
おそらくボクも「何かやりそうだ」と云う自覚があるのだろう。
AKBの握手会には行かないが、もしブックオフ辺りでで108円で買ったCDに有効な券が入っていれば?
近くなら、とりあえず行くだろう。
握手じゃつまらないから・・・と何かやるだろう。
その延長にあるから、他人ごとではない。
加害者の母親のコメントがあった。
「とんでもないことをしてしまい、どうしたら・・」
心中察するに余りある。
成人男子に対して、いまさら育て方の瑕疵とか家庭環境とか言われても困るだろう。
なんであんなことしたんだろう・・正直その通りである。
そして、本人の問題だから親は知りません!ではこの社会許されない。
多数決ではそうなる。
地域からはじかれて、彷徨った揚句に家族ともども居場所がなくなる。
経済的には更に惨い。
取りやめになったイベントにかかる損害賠償とかがあって、ベラボウな額がかかる。
3軍の握手会だから3分の1で、とはならないだろう。
やっと成人した子供のせいで「億」の金を請求される。
とんでもないことこの上ない。
愛撫とタイトルを書くと、妙な来訪者が間違って来る。
SEXが飯より好きなヒト。
夫の愛撫に飢えているヒト。
愛撫のテクが書いてあると思うヒト。
愛撫に一言ある人。
愛して撫でること。愛して寄り添うこと、触れること。
事件が起こると大抵、愛情不足であるが故の精神倒錯により正常な判断が・・・と弁護される。
黙れ。
愛撫イコールなめる、なめさせる。
それもデリケートな部分。
そういう短絡がそもそもおかしい。
子供の頭を撫でるのを愛撫と呼ばず、歯も磨かないでなめまわすことを愛撫と呼ぶ。
みんな、根本からHなんだろうな。
雑誌でも未だに「いかせる愛撫の方法」なんて特集が人気がある。
曰く、指の腹を使うとか、手のひらを回転させるとか・・
立ち読みしながら手をグリグリしている中年男を見ると切なくなる。
まず相手がいるのだろうか。
愛撫に至るまでのきっかけとか会話はどうなるのだろうか。
愛撫の仕方より、ヒトを好きになれ。
いきなり好みの女を口説けないだろうから、悶々とする。
誰でもいいからやってみたい、いや、させろ!
こうやって一足飛びな犯罪者が増える。
捕まえてみれば、犯行理由もあったもんじゃない。
弁護する側にも同情する。
愛撫を受ける側からの、愛撫に対する反応というのもある。
近所の子供とか、ボクの周囲の子供も、二極化する。
手を頭に伸ばすと、、ニコニコして撫でられる子供と、警戒して頭をひっこめる子供。
小さい頃は前者が多く、やがて殆どが後者になる。
それは家庭とか社会もあるだろうが、結局個性の問題だろう。
ヒトへの間合いをいかにして培ってきたかである。
どんなに手を伸ばしても、払い除け続ける子供もいる。
女の子だ。
いつか叩かれるという猜疑心と、自己防衛でそうなったのだろう。
不幸である。
そうなったことより、今も今後もそうであろうことが不幸である。
(ボクが中年のハゲだから変質者に思われている、と云う理由も主である。)
ヒトが嫌いになったら、まず近しい人から触れてみると良い。
言葉ではないものが、ビリビリと伝わってくる。
緊張とか、怒りとか、不安。
子供からの不安はすぐに伝わってくる。
大人なら触れていられないほどにチクチクと感じる。
何も感じなければ、きっと大人じゃないのだ。
なめられていれば最高!と云う下らない大人だ。
感情は耳から口に入って、胸で淀んで、長い時間の後に指先から出ていく。
怒るヒトは、胸に納めないから、まず怒鳴る。
怒れないヒトは、胸が苦しくなり、指先が痺れてくる。
まず指先で指先を撫でてみる。それが愛撫の一歩。
最近、頭を撫でさせなかった子がニコニコと近づいてくるようになった。
頭を撫でて「大きくなったね?」と言う。
『それだけ?』と言いながら、とても無邪気に笑うようになった。
何かが変わったらしい。
訊いた。
母親が出て行ったそうだ。
顔を見合わせて、ゲラゲラ笑った。
こうなると、笑うしかない。
最高のユーモアだ。