シャア=アズナブルと云う病
仕事での無理が祟って、小休止している。
年度末だとかいう得体のしれないものに、みんな殺伐としている。
ボクはこの時期、滅入る。
目の前だけを考えているので、先々のことで気苦労をしているのは、無駄に思えるのだ。
大方は先々まで毎年やることが決まっているのに、毎年バタバタしているんだなぁ。
学ぼうよ、少し。
人事異動もこの時期に集中する。
喜怒哀楽悲喜こもごもで、憤怒哀切ばかりが目に付く。
自分が過小評価されているとか、あいつなんてお門違いだとか。
『あいつを行かせるなんて人事も無謀だ!』
『自分が残留なんて誰も考えていないのに!』
でかい独り言だ。
自分のためだけの援軍を乞うているのか。
なりたい自分となれない自分の乖離が大きくなって、現実では修正不可能になっている。
こうなると診察や投薬は無効で、一人で安酒をあおりながらホステスに頷いてもらうしかない。
毎年「シャア病」を患っていく大人は多いが、この人事査定の結果の時期は特に増える気がする。
貴方は何様ですか。
高みを見るばかりでなく、少しは協調して全体の利益を考えて欲しい。
もっと和を重んじて、部下を育てて欲しい。
中間管理職を軽んじないで欲しい。
アムロには遠く及ばないことを自覚して、組織だてていけばシャアはもう少し偉人になった。
歴史には残らなくても、中興の祖としては充分だったでのある。
シャアは幼児性を捨てきれず、一年戦争を利用して私怨を晴らした。
キシリアを公開暗殺した時点で逃亡の身になるところを、またグラサンかけて世に出てくる。
ゲリラや情報戦に徹すれば、まだ人間らしいところをそうはしなかった。
組織ではハヤトに後れ、情報ではカイに遅れる。
馬鹿野郎。
永遠の処女性と母性、神格をニュータイプに求め、頭がよくないから結論が突飛だ。
クェスを馬で追いかけ、ハサウェイに負ける。
シャアのあのニュータイプ宜しくひらめく「ぴろり~ん」の音は和訳するとこうなる。
「16歳少女こそ適齢期」
馬鹿野郎。
人権団体と児童養護団体に殺されてしまえ。
ボクは、ガンプラの頃からシャアが好きではなかった。
専用!と云うのがどうも嫌いだったのだ。
角が生えてるとか、ピンクなのに紅い、とか、どうにも偏ったマイナーチェンジが目に付いた。
何より、あのシャア色は、10人いれば10人が異なる調合をする。
あれは卑猥な破廉恥カラーでポルノ色だからだ。
サンリオでもハローキティぐらいがぎりぎり許される色で、毛の生えた大人が選ぶ色ではない。
一方のアムロは、長らく不人気だったが、もてないいじめられっ子だったボクはとても共感した。
いじめっ子になったり、もてるような時期が来ると、なおさらアムロ押しになった。
大人になると尚更だ。
専用のMSなんかなくても、あるもので間に合わせる。
GMでもガンキャノンでもリガズィでも、戦死しないどころか結果を出す。
アムロは、叩き上げの技術者であるからだ。
結果が出なければ、現場で話し合って自分で直す。
怒鳴ってばかりいる官僚の中で立派なもんだ。
ブライトも額の後退を押して、男を上げていった。
アムロの理屈が多い?
理屈が多いが、それは組織に対しての一般常識の吐露である。
結果だけは出す。シャアには負けない。
納期は守る。その気になれば地球も救う。
それで給料以上に働くんだから、上司は文句を言ってはならないのだ。
上から言うだけの大人よ、言ってみろ。
「MSないからコアファイターで出ます!」
ボクの立場で考える。
『そんなんだからウツになるんだ!』
いまだに二言目には言われるが、今やすっきりと流している。
そんなん、とはつまり、組織の論理なのだ。
前例がないとか、余り早く片付けると他への体裁が悪いとか、
そこを、でも普通に考えて変ですよね・・?とやるのがアムロなんだろうと思う。
組織では言ってくれるな!ということを、言うのがアムロなんだと思う。
ニュータイプとは、低俗な揶揄であり、組織からすれば煙たい一般常識への恨み節である。
まったくどっちが大人だか子供だか。
連日そういう組織論理で吊し上げられたら、ウツにもなると思う。
シャア?
結論は出ているが、あれは病だ。
これでガンダムに負けるんだったら、荷物をまとめたほうがいい。
無論、エルメスだけである。
一方的な虐殺で、その後の条約が変わると思う。
それを、シャアは、出来立ての新造機をスクラップにしたのである。
サザビーだってMSNの04ナンバー、壊せと言われても難しい機体だ。
ニュータイプ機体を一人で2機。
見事な凡才である。
凡才なら模倣に徹すれば良いのだが。
あるいは、形だけを真似て、ガンダムのあのカラーリングをセラピー的に使ったかもしれない。
・・・実際にある。
ホビーハイザックである。
出来たところで「私は好かんな」と逃げたのであろう。
実際にホビーハイザックが世間に出たときは、シャアは忙しかった。
大好きな「男根の象徴=馬」に乗り、更に大好きな16歳のクェスを拉致する最中であった。
シャアが中心にいるとき、物事はいつも委縮するか挫折してきた。
・お家復興
・妹をもう一度
・打倒アムロ
かように、シャアは自分の欲望をいかにもっともらしく叶えるか、それしか考えていなかった。
そして、いつも計画が半端で、あるいは計画をばらして頓挫する。
三流政治家にも満たない、かまってちゃんで困ったちゃんである。
今は、シャアを挙げなくとも、宇宙世紀には偉人が多い。
歴史家も大人だから、シャアは病気だと気付いたんだろう。
シャアが年表に載るのは、一瞬。
「シャアの反乱」
セポイの反乱より遥かに後であるが、扱いは小さいらしい。
一瞬の歴史に載るよりも、平凡に、歴史の中に無関係に生きたい。
ボクはそう思う。