サマルトリアの王子
3人寄れば、それぞれの個性が目立ってくる。
押しの強い人。かわす人。
ボケる人。突っ込む人。
身振りの多い人。前川清ばりに動かない人。
良くしゃべり良く笑わす人。
良くしゃべる割にはつまらない人。
しゃべらすのが上手な人。
個性的な性格の人は、似たもので群れを成すが、それではアクが強い。
3人いると、ひとりは自然体な人が入ってくる。
通称「サマルトリアの王子」である。
没個性だが、なぜか気になる人。
頷くだけだが欠かせない人。
その人を入れないと、なぜか落ち着かない。そういう人。
ボクもそういう朴念仁に憧れるが、今3つくらい、素質に恵まれない。
サマルトリアは、おそらく、成ろうとして成れるものではない。
達観の境地なのだろうが、本人は自覚がない。
条件は環境によって大きく変わるだろうが、大体こんな感じ。
・ 常識人だが、非常識な行動が目立つ
・ 長く社会にいるのに、いつも傍観者
・ コツコツタイプだが、ドカンと飛ばす
・ 安心できる人柄だが、なぜか安心して放置できない
そして共通しているのが
・ フォローが凄く上手い!
のである。
合コンで男女混成でのぞんだとする。
自己紹介から外し、盛り上げては滑り、滑ってはとまらなくなる。
お笑いなどの時事ネタをふんだんに盛り込んで、誰もついてこられない処で気付いても遅い。
このご時世に、パンイチになり一気飲みも辞さない。
そう、彼はローレシアの王子。
カードとか占いとか技ものに凝るが、全体を見られず暴走する。
酒もほどよく飲むが、酔いやすく、自分の酒量がよく判らない。
そこそこ可愛いが、相応の魅力を発揮するには、周旋を要する。
そう、ムーンブルクの王女。
この二人だと、短時間で金も体力も果てて、思ったような成果が出ない。
理由は「やりっぱなし」だからである。
相手を無視しているのである。
ここに、微笑みの頷き天使、サマルトリアが入ることによって、戦局は大きく変わる。
ローレシアがつまらなくなると突っ込んで抑え、場が静かになると、逆に目くばせをしてくれる。
ムーンブルクの酒のピッチを横目で確認しながら、チラ見せ等の「効果的な魔法」を適宜教示してくれる。
そして、サマルトリアは、皆がトイレに行ったり休憩を入れたり、という間の持たせ方が絶妙に上手い。
まさに回復系魔法の使い手なのである。
そして、サマルトリアの弱点は、自分の回復が後回しになることである。
周囲への気遣いが嘘のように、自分への負荷には凄く弱いのである。
ボケた「フリ」に、真面目に聞き入り、え?何だっけ?とか言ってしまう。
ローレシアの後ろで散々受け流していた、極寒のギャグに貫かれてしまうのである。
お前が最初に死んでどうする!?
周りの非難もごもっとも。
同じ部署で3人で混成のプロジェクトチームだったとする。
ただ裏付けがない。
ムーンブルクは、資料はきれいで立派だ。
ただ、内容がマニアックで説得力がピンボケだ。
ここでも、サマルトリアは発揮する。
「そこまで推せるものではないにしても(笑)・・市場は十分についてくると思います。次の資料が・・」
「この資料はとても偏った風に見えますが、実は購買層を良く絞っておりまして・・」
凄いぞ、サマルトリア。大人だぞ。
急に一人で潰れやがるのだ。
タイミングが最悪なのだ。
良い雰囲気で二次会直前!のときに寝るのだ。寝ゲロなのだ。
社長へのプレゼンなのに、最終チェックでドッカーン!とやるのだ。
ボスにメガンテするな、とあれほど言ったのに。
どこの会社にのどこの部署にもいるのだ。
これからという時に、メンタルで倒れる人・・・
不安要素が何もないのに潰れる人・・・
悲観することはない。