禁読！ＰＴＳＤ、繊細な人

　ボクがまだ、年齢一ケタだった頃のお話。今はない町のお話。
「」はボクのセリフ、『』はそれ以外です。

今思えば、あんな大都市にもあんな町があったんだなあ。

　ボクは不良どころか浮浪児と友人？になってた。立ち入り禁止区域のずっと奥に町はあった。
はじめて遊びに行ったとき、長（オサ）に挨拶なかったということで、
ボクは２メートルぐらいの口のきけない大人に張り飛ばされた。

　次は長に１００円を持っていった。

『どっから盗って来た？いいとこのガキ？』
「い、いや小遣いです」
長は投げ返した。

『そんなモンで腹がふくれるか！？』

また、蹴りたおされた。みぞおちだった。

『食いモンをもってこい、じゃなきゃ酒だ』
『そのへんほじくったって酒は出ねーぞ』

友人のうち（テント？）に行くまえに吐いた。わーっと大人が集まってきた。
沢山の大人が群がって、ボクの反吐を食っている！

『ガキ！どこでこんな上物食ってきた？』

『いいとこのガキだ』『はーん？』『良くこんなとこにくんな？』
『売っちまうか？』
『いや、もう遅えや』
『今日はだんなこねえだべ？』

友人のうちは両親らしき人と弟か妹（性別全く不明）がいる。
『長に挨拶したろな？』
「うん」
『何か持ってったな？』
「金」
『バカ！金なんかここじゃ意味ねぇんだよ！』
「さっき知った」
父親が言った。

『クソとガキ！それで酒、買って来い！』友人はクソと呼ばれていた。
違うテント、いやもう少しましなバラックに友人は入っていった。ボクも入った。
何ていうか、腐臭を越えた臭い。もう吐くもんもないので、やがて慣れた。

ガラクタと一緒に無造作に死体、１体じゃない

『酒か？』
『コレと引替できっか？』
『１００円！？まあいい、一応混じりもんだが銀だろ？ホレ』
オッサンは酒を友人の一升瓶に注いだ。シンナーよりきつい臭い。酒か？

「あ、あのそれ死体？警察に・・・」

『バカ、売りもんだ！○や○は使える。だんながくりゃ、いいもんと交換できんだ』
『警察？何だっけ？あ、犬か？ここにゃ来ねえよ？犬でも命は惜しいときてる、ワハハハハハハ！』

友人とテントに戻る。にわか雨が降ってきた。すごい雨漏り。父親が言った。

『おい、いいとこのガキ、お前はそこだ』　雨漏りの一番ひどいとこ。
「そのダンボール貸して」
『何！！？？こりゃオレの枕だ！外よりましだろ、中だけ、ありがてえってもんだ！』
友人に言った。
「このまえの３００円返せよ」
『返す？なんだそりゃ？あれは買いもんで、もうない』

「なに！？ガンプラ１個かえんだぞ！なんに使った！？」

『ああ、となりの赤ん坊と、そんで、さっきんとこで替えてシケモクどっさりよ』

「！！？？人だぞ！３００円？そしてタバコの切れっ端？」
『いらねえんだよ、今じゃ。うるせーしすぐ死ぬしな』
「！！！？？？ちょ、ちょっとまて、水くれ。」
『水？あそこ』　指差した先はドブ川だった。近くで用足してる人。便所兼用か？

でも飲んじゃった。一瞬で、のどカラカラってこともある。何でもいいってこともある。

　数ヵ月後、行ったとき友人は施設に入ってて、母親と兄弟がいなくて、父親が酒飲んでた。

「あれ、○○は？家族も？」

『ああ、今日、とっかえる。じゃまだしな。クソもバカだ、捕まりやがるし』

こっそり、いかにもなデカイ車が町に入ってきて、普通の大人が数人出てきた。
はなしてるのは・・日本語じゃない。ん、通訳もいるのか。

積み込まれる沢山の、人？死体？、あ、母親が、兄弟も。

引替に長が何か食べモンらしきモンを受け取っていた。

「あぁ・・・」
『おい、いいとこのガキ、話すなよ』
「話せるか、こんなこと・・・」

　数年後、友人が少年院から出ることを、なぜだか知り、数人で迎えに行った。

『お、○○、お前も、お前も何で知った？』
「知らんよ」　
院をよくしるヤツが聞いた。
『おい、けっこういいだろ？ここ』

『おお、メシでんだぜ、腐ってねーの！水って色ないのな？』
『こんないいとこあんだな！オレ、住みますっ！たのに、二度と戻ってくんな！だってよ』

「・・・」　　　　　しばし沈黙。

『ん、んで何がいっちばんビビッた？』

さすがの院帰りも聞いた。

『オレ、名前あんのな！みんな、ねえのかと思ってた！？』

『あと、ヒトって死ぬとあんな騒ぐのな！？』

「・・・」　　　　　しばぁぁぁぁぁぁぁし沈黙。

みんな、しょせん・・・ボクら「いいとこのガキ」だったわけだ・・・。

「おい、お前の町、もうねぇぞ・・・」

『用無しよ、もう字もかけるし、本？だっけ？読めんだぜ！』

『次の長、見つけたからよ、デケエことすんゼ！！』

今、何をしてんのか、察しはつくが、日本にゃ、や、アジアにもいないでしょう。

めでたしめでたし。　おしまい。