MelancholyDampirの日記

ウツな人の独り言

テレビを見ていない

テレビを見ない。
一週間に30分も見ない気がする。
嫌いなのではない。
点けていても、映像は視界に入らず、音声は雑音として認識されないらしい。
どんなに家族が笑っていようが、面白いから見てごらん、っといっても、すぐにホワイトアウトしてしまう。
ボクにとって、テレビは「でかいハコ」なのであり、どうでもいいモノなのである。
理由は考えられる。
 
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「小ちゃいオヤジ」がいないことである。
子供の頃は、ブラウン管も大きく長く、いかにも「小ちゃいオヤジ」が中で作業していそうな雰囲気であった。
「小ちゃいオヤジ」はときにはアニメを製作し、時には扮装して女優や俳優、はたまた外国人になるのである。
おぉぉ!!??という場面に出くわすたびに、テレビに近づき、小ちゃいオヤジ・・無理するな・・と呟いていた。
ドリフや漫才で「写っていないヒトの笑い声」が聞こえると、
お、小ちゃいオヤジ、今日はしっかり楽しんでるな、と妙に安心した。
学校でも「テレビの中には小ちゃいオヤジ」は常識となっており、サンタはいない、より常識であった。
ネッシーやUFOを信じず近代科学的考察でボクをねじ伏せようとしたメガネ君たちも、小ちゃいオヤジは信じた。
 
『モザイクってどうしてあんなに上手くぼかせるんだろうか?』
「小ちゃいオヤジがすごい頑張るからな・・モザイクは給料が破格なんと違うか?」
『深夜とか早朝とか・・小ちゃいオヤジ、いつ寝てるんだ?』
「交代制らしいよ。だから町内では寝てるテレビもあれば、起き続けるテレビもあるじゃんか」
 
テレビをあまりつけない年寄り宅に、みんなでなだれ込み、すべりこみながらHなビデオを入れる。
スイッチを入れるが、すぐにビデオの再生はしない。
「小ちゃいオヤジ!フェイントじゃぁ!」
小ちゃいオヤジ敗れたり!と慢心してテレビを見つめる。
ゆっくりと画面は映り、モザイクもしっかりと立ち上がってゆく。
どこもずれていない、慌てた感じもない。見事な仕事だ。
全員で嘆息。
 
「小ちゃいオヤジ・・・油断も隙もないな」
『少しぐらいサボればいいじゃんか』
『Hな気持ちまで、きっちり仕事されてはかなわんわ』
「あんなにヒトが小さいのにモザイクかけたら全身モザイクだべ・・」
「小ちゃいオヤジ・・血も涙もないな」
 
そのうち「うちの小ちゃいオヤジ、寿命みたいだ・・疲れてきて、もう狂ってきてるわ」という情報。
何のことはない、ただのテレビの寿命なのであるが、みんな総毛立つ。
すわ!と駆けつけ、テレビをつける。一面が赤とか緑とかの画面・・。
「小ちゃいオヤジ、赤緑色盲だ!大変だ、白内障かも知れない!」
テレビを必死に叩くが、叩けば叩くほどおかしくなる。
『叩くな、もう叩いてもいかんわ・・』
『わ!いかんぞ、この状況わ!いかんぞぉ!』
『小ちゃいオヤジ、ガンか?苦しいだろうな』
誰ともなく、テレビの前に菓子やらジュースやらを置きだす。
もう死ぬんだから、いや何を不吉なことをぬかす、と押し問答があり、
そのうち、そのうちの奴が「ビールとあたりめ」とかをテレビの前に置きだす。
「小ちゃいオヤジ、ありがとう・・・好きなだけやってくれ?」
一瞬だけ、真夏の日差しのように画面が鮮やかになり、またすぐに光芒となり消える。
小ちゃいオヤジは、最後のひと頑張りを見せ付けたのだ。
 
『小ちゃいオヤジオヤジぃぃぃぃ!!??』
 
その家のじいちゃんが出てきて「オヤジは仕事じゃ」とボケたことをぬかしてまた消えていった。
しばらくして、電気屋が新しいテレビを持ってきて、古いテレビを回収していったらしい。
古いテレビは少し軽かったらしい。
小ちゃいオヤジが、こっそりと抜けたのか、魂だけが抜けたのか・・・未だに不明である。
 
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今のテレビは薄いくせにでかい。
小ちゃいオヤジは住んでいなさそうだ。
高機能でゲームもできるらしい。
小ちゃいオヤジでは荷が重そうだ。
若い奴らの時代になり、テレビも人間味がなくなった。
 
今は横で、テレビが「主電源の赤い光」を発しながらニタニタといる。
どうも暴虐なワルモノメカの感じがする。
テレビは小ちゃいオヤジとともに「普段は寝てる」モノだ。
どうもテレビは好きじゃない。
 ボク自身が小ちゃいオヤジになりたかったのかも知れない。